弱肉強食は「善」か「悪」か

人間の「性・さが」は、善か、悪か。

                            著 野村玄良
 

 

       百花繚乱は、冬からの目覚め!

 

 

  万葉集・0349 の歌

 

 生ける人 遂にも死ぬる ものにあれば この世なる間は 楽しく在らな。

 

 生きている者は、いずれ死んでしまうのだから、この世に在る間は、楽しくやろうじゃないか。

 

◆あんた!そんな暗い顔をして、ささ、一杯飲んで、遊びに行こうぜ! 

 奈良時代でも、今と同じだね。ほんと厭だよね、この人間世界というものは!

 

 

「血の渇望・かつぼうの哲学

 

◆渇望とは、喉の渇きと飢えを満たす為の、牙をむいて他者を喰らうほどの、血に飢えた欲望を言う。

 

◆生き物は、外から何かを取り込まないと生きてゆけない。だから自分自身も、常に何者かに、「獲物として・食い物」として狙われているのです。すべての生き物は、何者かの食い物(獲物)として存在している事実を忘れてはならないのです。それを弱肉強食の循環のリングと言います。この世界は、弱い者が強い者の犠牲になるような、実力の違いが、そのまま結果に違いを生じせしめる、自然界の必然的な闘争の悲しい哲理です。この非情の哲理は同時にまた、まったく真逆の様相を持って居るのです。

 それはすなわち、あの有名な平家物語の冒頭の一節、「盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)」のことです。

 勢い盛んな強者でも、必ず衰微して滅びるという「もののあはれ=形を持つものは、必ず崩れるという悲しい結末が用意されているのです。それを平安時代では「滅びの美学」ととらえました。滅びは避けることのできない「自然の摂理」なのです。それを「諦観・ていかん」する弱者の立場にある女性たちの、したたかな生きざまが源氏物語に描かれています。

「形あるものは壊れる」という「必衰の理(ことわり)」の冷酷な現実世界に、あらがうことはできないのです。この世は自然の摂理に支配されているという事実に目を覚まさなければならないのです。

◆鰯がマグロの餌食となり、雀が鷹の餌食となり、羊が狼の餌食となる動物の世界は、現代でも恐竜の住む太古から全く変わっていないのです。この地球上では、つねに弱肉強食の修羅場が演じられているのです。それ故に、天寿をまっとうして死にたいという願望は思うようにはいかないという現実に直面するのです。

 

 参考に!

◆以下は、中国の「弱肉強食」を指摘した有名な一文です。


「韓愈『送浮屠文暢師序』。これは、韓愈(カンユ)が僧:文暢(ブンチョウ)の旅立ちに際して送った、『浮屠(フト)の文暢師(ブンチョウシ)を送るの序(ジョ)』の一文です。

 

●「弱きの肉は、強きの食なり」とあるのに基づいた、「弱肉強食」の四字熟語の初出の文章です。

 

文中の一節に 「夫獸深居而簡出。懼物之為己害也。猶且不脫焉。弱之肉、強之食。」

 

夫鳥俛而啄、仰而四顧。 (夫:それ 鳥俛して啄し、仰いで四顧す。)
鳥はうつむいて餌をついばみ、首をあげて四方を見まわす。

夫獸深居而簡出。 (夫れ獣、深居して 簡出す。)
獣は深い山奥に栖んでいて、たまに出て来て食物をさがす。

懼物之爲己害也。 (物の己が害を為さんを懼れるなり。)
他の動物が自分を害するかもしれないと懼れるのである。

猶且不脫焉。弱之肉,強之食。 (猶且つ脱せず、弱の肉は強の食。)
そのようにしても害をまぬがれない。弱いものの肉は、強いものの食物である。


今我與文暢安居而暇食、優遊以生死。 (今我と文暢と、安居して暇食(カショク)し、優遊(ユウユウ)以て生死す。)
今、私と文暢は、家の中でゆったりと食事をすることで、互いに死を意識せずに安らかに生きていられるのです。 

 

 この一文は◆人間は、食べ物に、飢えていない(渇望していない)ということの大切さを述べています。すなわち、人間は自分だけの「不足・不満(自分の不幸=我欲)を探し求めて、他人を喰物にしてはならない」という、空腹は避けねばならないと言う「和の哲学」です。◆「和」の語は、のぎへん(禾編は穀物)を表し、これを口に入れるという構造になっています。腹を空かさないことが「平和」の条件なのです。欲望を抑えること!

 

●今、プーチン一人の野望により、世界の政治経済は大混乱に陥り、またウクライナ国内では、露軍によって、多くの市民が戦火で傷つき、市民の殺戮・蛮行が行われている。

◆歴史上の独裁者達の共通点は「人々をたぶらかし、武力や権力で脅どしまくり、長期の独裁政権を目論む」共通の性格をもつている。

 

これ等を英語に意訳すると : law of the jungle , survival of the fittest ,

               ジャングルの法則は弱肉強食なり。

今、血を渇望する独裁者が、牙をむき獲物を求めて、ジャングルを徘徊している! 
 世界は、軍備増強をどこまで進めるのか!この果てしなく続く、けもの道悲し!

               それではまた!